当蔵「ぶんご銘醸」がある佐伯市は大分県の南部に位置する豊かな自然に惠まれた地域です。
二〇〇五年に佐伯市と五町、三村が合併し、その面積は現在九州で最も広い市町村となりました。
海岸部はリアス式海岸、そこで獲れる新鮮で豊富な海の幸は佐伯の自慢の一つです。
また広大な祖母・傾山系の山々から流れ出る番匠川は、九州屈指の清流として知られています。
当蔵はこうした環境に恵まれた場所で明治四十三年から今日まで清酒・焼酎造りを続けているのです。
酒造業界は伝統文化産業であり、昔からその地域と密接な関係にありました。
なかでも清酒や焼酎の原料となる米や麦を生産する農業とは深い繋がりを持ってきました。
蔵にとっては農家の方 は大切な存在なのです。
しかし現在、流通の発達によって原料である米や麦の選択肢は広がり地元だけでなく、様々な地域から手に入れることができるようになったのも事実。
確かに良質な原料は地元以外にもたくさんありますし、そういったものを求めることは事業として大切なことの一つ。
ですが、そのことで地元との関係が希薄になり、元来あった地域性や個性は影を潜めてきたのではないかと思います。
世界との距離が近くなり、昔と比べグローバルな社会になってきました。逆に言えばそれだけ地域にスポットが当たる機会も多くなったという事です。
そういった視点からも今一度、地元との関係をより密にして、地域のものを地域の人と共に創り上げていくことが必要ではないかと思います。
酒造りは地元に根差し、地域と共に生きていく伝統文化産業。
佐伯の土から生まれた農作物、清流番匠川の水、そして先人によって古くから伝えられている文化。
そういった佐伯ならではの風土を反映した清酒・焼酎造りをしていきたいですね。
酒造りは言うなれば文化の継承。
美味しいことはもちろんですが、私たちのこうした思いが飲む方の心に響く一献を酸し出していきたいと思います。
そして次世代へとその理念を伝えていくことが、これからの蔵のあるべき姿ではないかと考えます。